『価値づくり』の研究開発マネジメント 第348回
普通の組織をイノベーティブにする処方箋(195): KETICモデル-思考(137)
「発想のフレームワーク(73):思考の頻度を高める方法(50) 妄想のすすめ(20)」
(2024年1月20日)
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今回も引き続き、「妄想を積極的に促す方法」について考えてみたいと思います。
●妄想を積極的に促す方法(その27):価値に向かって考える
前回まで「遊びごごろを持つ」について3回にわたり議論をしてきましたが、現実には「遊びごころを持って妄想しろ」と言われても、どう妄想したら良いのかがわからないというのが現実ではないでしょうか。「妄想しろ」、「なんの制限や前提なく広く考えろ」といわれても、思考の対象は前後左右上下360度なんでも良いというのでは、空をつかむようなものです。ですので、遊びごころをもって妄想するにしても、その向かっていく先が抽象的であったにしても、明確でないといけません。
〇「価値」に向かって妄想する
遊びごころで妄想するとは、言い換えると「こんなことをしたら面白いんじゃないか」を考えることですので、「面白い」がここでのキーワードになるように思えます。それでは人間は何に面白いと感じるのでしょうか?私は、今まで実現できていなかった価値を実現できるかもしれない、もしくはすでにその価値は実現できているんだけど、その実現法をより高度に実現できるかもしれないと思った時に、「面白い」と感じるのではないかと思います。つまり「面白い」というキーワードをさらに突き詰めると、「価値」に至るということです。
〇「価値」に向かって妄想する(1):「価値」を感じる対象領域を広げる
妄想を促すには、その「価値」をもう少し具体的にする必要があります。その一つの切り口に、「誰にとっての価値」なのかというものがあると思います。誰にとっての価値なのかを考えてみると、自分自身を出発点にして、同心円的に、以下のように広く外に広がっていくと考えることができます。ここでのポイントは、自分自身だけでなく、自分中心の思考を解き放ち、他者にとっての価値と考えることで、妄想の対象領域が大きく広がります
-自分自身
-自分の身近の人達(家族や友人など)や動植物(ペットなど)
-自分が属している・関係している組織・集団・近隣地域(会社、学校、近所、宗教団体など)
-社会
-国や周辺国を含む地域(日本、アジアなど)
-世界・地球全体
※:実際に世界・地球全体の先には宇宙、さらには宇宙の先にある神羅万象がありますが、普通の人にとって宇宙にとっての価値にはさほど価値は感じないのではないでしょうか。
このような価値の対象者を常に意識しておくことで、おおいに妄想につながるように思えます。
〇「価値」に向かって妄想する(2):PainとGain
価値の創出の視点として、Pain(困りごと、問題)とGain(あったらいい)があります。価値には困りごとや問題の解決によって生まれる価値と、問題とは認識されていなくても「こんなことできるといいよね」などによる価値があります。
Painについては、世の中の問題に広く関心をもったり、目の前の問題について常に意識しておくことで、妄想を誘発しやすい状況を生み出すことができます。
Gainに関しては、ほとんどの場合対象となる問題は潜在化しているので、Gainより妄想に結び付けにくいということがありますが、共感や愛おしさを持って対象を認識することで、おおいに妄想が促進されるように思えます。
私ごとで恐縮ですが、この歳になるまで私は相撲に全く興味がなかったのですが、先日他に面白いテレビ番組がなかったので、しかたなしにNHKの相撲をみたところ、これが面白い。まわしだけを身に付けた不格好な太ったある種ユーモラスな力士が闘志むき出しにして、それこそ自分の人生を賭けて裸で取っ組み合う。そこで思ったのは、こんな面白くユーモラスなスポーツを、日本の伝統ある国技だといって日本だけに後生大事に閉じ込めておくのはもったいない。世界のスポーツにし、各国の「でぶちん」の代表が土俵の上で裸で取っ組み合いの真剣勝負をし、世界中の人達がこのユーモラスなスポーツを観戦し熱狂したら、もっと世界は一体になれる(まさに世界にとってのGain)のではという、まさに妄想を思いつきました。
この妄想いかがでしょうか?
(浪江一公)