『価値づくり』の研究開発マネジメント 第336回
普通の組織をイノベーティブにする処方箋(183): KETICモデル-思考(125)
「発想のフレームワーク(68):思考の頻度を高める方法(38) 妄想のすすめ(8)」
(2024年7月29日)
今回も、引き続き妄想を積極的に促す方法の議論を、続けたいと思います。
●妄想を積極的に促す方法(その16):過去・現在の大いなる妄想の事例を集める
過去には大いなる妄想によって、偉大な、またとてつもないスケールで常識外れの偉業を成し遂げた例が数多くあります。そして現在進行中の大いなる妄想の事例もあります。それらから学ばない手はありません。
〇大いなる妄想の事例
たとえば、その例に万里の長城があります。中国では紀元前の土木機械などまったくない時代に、あのような巨大な構造物をそれこそなん千キロ、なん万キロにわたり構築するというアイデアは、妄想以外のなにものでもありません。それにエジプトのピラミッド。万里の長城と同じように、墓という物理的にはなんの価値もないものに、とんでもない数の労力と人間の命を懸けて作るということ自体妄想です。
万里の長城やピラミッドのような物理的なもの以外に、偉業や後世の人間やその生活に大きな影響を生み出した妄想もあります。たとえば、人間を月に送ったアポロ計画。もちろんその当時には、地球の周りをまわる人工衛星はありましたが、地球の軌道を外れて、月に人を送るというのは、ある意味妄想です。
さらには宗教。キリスト教にしてもイスラム教にしても、実際に神など存在しないのですから、宗教は妄想にすぎません(神の存在を信じている人はもちろん沢山いますが)。人間の歴史の中で、宗教ほど人間に影響を与え、そして現在も与え続けている妄想はないでしょう。
今この時点で、アメリカの大統領選が世界中の注目を集めています。今後世界に大きな影響を与えるトランプが、再度大統領に返り咲くかということです。トランプの支持者たちの多くは実際妄想に踊らされて、トランプを支持しています。前回の選挙結果には不正があったとか(トランプ自身がそのような主張をしています)、アメリカのエリート層は子供を誘拐して自分達の若さを保つためにその血を吸っているといういわゆる陰謀論(トランプはそれを利用)といった口頭無形の妄想です。このような妄想が、今回の大統領の選挙戦に大きな影響を与え、トランプが大統領に再選される可能性はおおいにあります。
〇大いなる妄想から学ぶ効果
それら大いなる妄想から学ぶには、3つの効果があります。
-妄想が実際になんらかの効果を生み出すという事実を認識する
これらの事例から、妄想という物理的の実体のない人間の思いが、大きな効果(上の陰謀論の例のようにネガティブな効果の場合もあるのですが)生むという、ある意味驚くべき事実を知ることができます。
-妄想が生み出すものの効果の大きさを理解する
加えてこれら事例は大いなる妄想が大きな効果を生んでいるのですから、妄想は小さな効果を含めればそれこそ沢山の効果を生む機会や可能性があるということです。
-妄想のパターンを知る
この2024年7月1日のメルマガの中で、「妄想を積極的に促す方法(その13):大胆な仮定で考える」において「合理的・科学的に実現できないと考えられていること」など、いくつかの妄想のパターンをあげました。その他にも妄想のパターンの切り口はいろいろあると思います。 妄想の事例を数多く知ることで、妄想のパターンを知り、自らの妄想の頻度を高めることができます。
〇おおいなる妄想の事例を集めるには
それではおおいなる妄想の事例を集める方法には、どのようなものがあるのでしょうか。世界の歴史を知る、内外の旅をする、書物を読む、を積極的に行うことではないでしょうか。
(浪江一公)