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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第330回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(177): KETICモデル-思考(119)
「発想のフレームワーク(62):思考の頻度を高める方法(32) 妄想のすすめ(2)」

(2024年5月7日)

 

セミナー情報

 

前回から、妄想のすすめについて議論しています。今回も、この議論を続けたいと思います。

●妄想は、実行に移す前にきちんと評価をすればよいだけ
妄想などにもとづき行動をして、失敗したり、他人に迷惑をかけたりしたらどうするんだ、という妄想に対する否定的意見があるかもしれません。もちろん妄想にもとづく活動には、リスクやコストが伴います。しかし、その場合には、きちんとそれらリスクやコストを評価すれば良いだけです。リスクやコストを掛けてもやる価値があると判断すれば、それを行動に移せば良いのです。

また、道徳観が強い人の中には、妄想で邪悪な発想、不道徳な発想をすること自体が悪いことと思う人もいます。しかし、人間はそもそも頭の中では、常にそのような「邪悪」や「不道徳」なことを考える生き物です。きちんと評価・判断をして、そのような発想にもとづいた行動を起こさなければ良いのです。

●妄想は良いことだらけ
この点さえきちんと押さえておけば、妄想には何も悪い点はありません。良いことだけです。それではどのような良い点があるのでしょうか。

〇妄想が妄想を生む:隣接可能性の効果
これまでもこのメルガマの中で、隣接可能性という言葉を紹介し、議論してきました。隣接可能性とは、なんらかのある程度の形になったものや知識があれば、そこから、その隣接する周辺に(そのため「隣接」可能性という言葉となっています)それをさらに良いものや概念に発展させたり、その他のものや概念を連想によって創出したりできるということです。

まさに妄想もそのような対象となります。この隣接可能性には、その妄想をより良い妄想に発展させたり、その妄想から他の妄想を生み出したりという効果があります。「そういう考えがあれば、こういう考えもあるな」といったことです。それにより、スパークの原料となる妄想が、どんどん増えていきます。

〇新たな深い経験や知識が得られる
その妄想に基づき、実際に活動をしてみれば、仮に期待した本来の結果が得られなくても、様々な経験や知識を生みだすことができます。また、その経験や知識は単なる妄想ではなく、実体験としてのより深い経験、知識です。まさに失敗の効果です。

したがって、上で「実行に移す前にきちんと評価をすればよいだけ」を議論しましたが、評価においては失敗から得られる経験や知識の価値も重要な要素として、評価の対象とする必要があります。それにより、妄想の実行の頻度が高まります。

〇妄想力が高まる
日々妄想をすることを心掛けることで、妄想力が多いに高まります。つまり、隣接可能性に基づく思考する力が高まるのです。妄想力が高まる理由には、2つあります。

-スパークの原料が増える
妄想した結果の妄想は、頭の中に記憶され、蓄積されていきます。その結果、妄想の頻度が高まります。

-スパーク力が高まる
実は新な妄想それ自体が、既存の妄想や知識のスパークで生まれます。すなわち、日々妄想を心掛けることで、スパーク力がおおいに鍛えられます。

〇その結果、イノベーションが起こる可能性がおおいに高まる
以上の結果、まさにイノベーションが起きる可能性が多いに高まります。

〇妄想は楽しい
そして、妄想は楽しいのです。現実には起こらないこと、起こらないと考えられてきた新しいことを自由に考えることは、それだけで楽しいということがあります。

(浪江一公)