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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第320回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(167): KETICモデル-思考(109)
「発想のフレームワーク(52):思考の頻度を高める方法(22) 体感で思考する(6)」

(2023年12月11日)

 

セミナー情報

 

今回も前回に引き続き、体感での思考とアナロジーとの関係を、蜘蛛の巣を漁網ととりもちのアナロジーの例に基づき、考えていきます。

●アナロジーと体感での思考の関係性
蜘蛛の巣を漁網ととりもちのアナロジーで考えると、漁網ととりもちについてすでにもっている知識や体験に基づき、また加えてそれ以外のこのプロセスの中から連想される過去の体験をも含めて活用することで、蜘蛛の巣というものについて広く思考することができます。

ここで、自分の関連する体験や知識を総動員し、まさに体感で思考するに有効な方法が、自分が対象物になったと考えてみることです。それにより、自分で体験したことを、最大限に活用して考えることができます。それを蜘蛛の巣を漁網・とりもちのアナロジーの例に適用すると以下のようになります。

〇自分が蜘蛛になったと仮定して
・漁網のような網状の遊具で遊んだ体験から、人間の2つの足、2つの手だけでは、網の上で移動するには、四つん這いにならなければならず、また足元・手元が揺れるので、動くのに大変苦労する。
・同じような遊具の体験から、網を持つ握力が十分ないと、移動などままならない。
・その点、蜘蛛は8本の足があり、また足には沢山の毛が生えていて、ものに吸着させることができ、また足先はかぎがたの爪となっていて、糸状のものに引っ掛けることができるという特徴をもち、網状のものの上でも、スムーズに移動できる。

〇自分が網にひっかかった獲物と仮定して
・ 漁網のような網状の遊具で遊んだ体験から、蜘蛛のような手足の構造を持たない(人間のような)生き物は、上の理由で動きがとれず、すぐに蜘蛛の餌食になってしまう。
・ガムテープなど粘着性のものを扱った経験から、網に粘着性のものが付着していると、ますます厄介になる。
・どこか高いところから落ちた経験があると、蜘蛛の巣や獲物を虎視眈々と狙っている蜘蛛から逃れる方法は、網をすぐに切断して、そこから重力を利用して落ちるしかないな、などと考えることができる。
・しかし、ガムテープなどのべたべたする粘着性のあるテープを切った経験から、ナイフやハサミのようなものでは、切断するにも苦労することがわかる。

〇自分が漁師になったと考える
・網状になっていても、水中などでは抵抗があり、網を動かすには大きな力がいる。空気中でも程度の差こそあれ、同じような抵抗がある可能性がある。
・ゴミなどがひっかかったら、もっと大変になる。
・ゴミなどがひっかかったら、後の手入れが大変だ。網にとりもちがついていると、ますます大変になる。

〇自分が網になったと考える
・自分が網という物になったと考えてみる。空中で手足を広げて、それぞれどこかに固定している自分を想定してみる。手足をきちんと固定することは、大変難しい。
・さらに、こんな状態で、上に誰かに載られたら大変。
・でも、体が細くて、手足が長ければなんとかいけるかもしれない。

●アナロジーは新しい思考空間へのドア/体感は新しい思考空間で発想を多いに広げるツール
このように、蜘蛛の巣について、漁網ととりもちのアナロジーで考える中で、漁網ととりもちのアナロジーは新しい思考空間へのドアとなります。新しい思考空間で、関連する自身の体感での経験を活用することにより、蜘蛛の巣のことを広く、そしてありありと想定することにより、発想を大いに広げることができます。

(浪江一公)