『価値づくり』の研究開発マネジメント 第284回
普通の組織をイノベーティブにする処方箋(131): KETICモデル-思考(73)
「発想のフレームワーク(16):失敗のコストのマネジメント」
(2022年7月4日)
現在「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にむけて、日々の活動の中でどうイノベーションを創出するかを議論しています。今回からは、失敗のコストのマネジメントについて、議論をしていきたいと思います。
●「とにかく多少とも価値がありそうであれば、積極的にやってみる」
前回に議論した「未知の知識を主体的に得る」ためには、「多少とも価値がありそうであれば、積極的にやってみる」を実践することが重要です。しかし、このようなことに踏み出すコストや、結果的に失敗する可能性が大きいのですから、失敗のコストを低減することができなければ、なかなか新しいことには挑戦できません。
●「とにかく多少とも価値がありそうであれば、積極的にやってみる」を妨げる2つのコスト
新たなことに挑戦を妨げるものとして、以下の2つのコストがあるように思えます。
〇踏み出すこと・踏み出そうとすることで発生する直接的コスト
「とにかく多少とも価値がありそうであれば、積極的にやってみる」と言っても、実際に踏み出すには踏み出すこと・踏み出そうとすることで「直接的」に発生する金銭的、時間的、心理的なコストがあり(この3つのコストは別途下で議論します)、簡単にそのような活動を行うことにはなりません。これらコストを低減する仕組みを作らなければ、失敗の可能性の高い活動に踏み出す気にはなりません。
〇踏み出した後に失敗による発生するコスト
当然失敗を前提として活動を行う訳ですから、失敗の可能性は大きく、それにより失敗のコストが発生します。失敗のコストがあまりに大きいものであれば、実際には企業にしても個人の生活にしてもダメージが発生するので、新しいことに挑戦するには、「あらかじめ」それを低減する工夫が存在していることが求められます。
●3つの種類のコスト
これら2つのコストにも、別の分類として以下の3つの種類のコストがあります。
〇金銭的コスト
まず金銭的なコストです。踏み出すにもお金が必要ですし、失敗の場合にはそれまで投入した費用が無駄になります。
〇時間的コスト
時間は企業、個人、誰にとっても大切な資源です。企業も個人も限られた時間の中でしなければならないことを、沢山抱えています。そのような中で、新な活動に踏み出すには追加的な時間が必要です。また、その後失敗した場合のそれまで投入した時間が無駄になったと「感じる」かもしれません。
〇心理的コスト
新な活動に踏み出すには、いずれの状況でも心理的な障害(心理的コスト)を乗り越えなければなりません。また、通常であれば、失敗をすれば誰でも心理的なダメージを感じるものです。これら心理的なコストを低減・払拭する工夫が必要です。
次回から、これら「とにかく多少とも価値がありそうであれば、積極的にやってみる」を妨げる2つのコストと3つの種類のコスト(金銭的、時間的、心理的)の6つのマトリクス一つ一つにおいて、どういう工夫をしていけば良いかを議論していきたいと思います。
(浪江一公)