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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第281回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(128): KETICモデル-思考(70)
「発想のフレームワーク(13):過去の過ちを棚卸する(会社編)」

(2022年5月23日)

 

セミナー情報

 

現在「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にむけて、日々の活動の中でどうイノベーションを創出するかについて、議論しています。前回は「過去の過ちを棚卸する:自分編」を考えました。今回は「会社編」を議論したいと思います。

●過去の過ちを棚卸する:会社編

会社は失敗の宝庫です。経営者や社員個別レベルでも、間違いなく大小数多くの失敗をしてきています。それらから学ばない手はありません。しかし、特に会社レベルでは、失敗から学ぶことは簡単ではありません。

●責任追及のための犯人捜しにならないような工夫

失敗は苦痛だからです。誰しも過去の失敗をほじくり返して、過去の古傷に触れられるのはいやなものです。また、封印された過去を暴くことで、新な苦痛を感じるのは避けたいものです。しかし、上でも触れたように過去の失敗は学びの宝庫でもあり、放っておくことは、大変もったいないことです。

ですので、ここは責任追及のための犯人捜しにならないような工夫が必要です。さもないと、社内では様々な抵抗に遭遇することはもちろんのこと、失敗から学ぶ活動が、社内の軋轢を生むことになり、結果としてこのような活動は二度とやめようという、社内のネガティブなコンセンサスが生まれてしまうことになります。

そのための工夫として、私は過去の失敗の棚卸の絶対守るべき原則として以下を掲げるということで、このような問題は解決することがあると思います。

原則1:目的はあくまで過去の失敗からの教訓を学ぶことで、それ以外の何物でもないこと。
原則2:仮に結果として失敗に責任のある特定の個人・部署が新に特定されても(実際にはその可能性は高い)、それを公表せず、また一切責任を問うことはしない。
原則3:そもそも、責任のある特定の個人や部署が特定され、社内にネガティブなインパクトが生まれてしまうおそれがあるような失敗事例は、敢えて調査の対象としない。
原則4:対象を研究開発に絞る。
原則5:企業における活動では失敗は当然起こり、同時に失敗は今後の大きな学びの機会を提供するものであることを経営トップが積極的に認める。

●失敗の棚卸の押さえるべき項目

失敗の棚卸では何がアウトプットとすべきなのかを、きちんと押さえておく必要があります。私は以下の項目をアウトプットとすることが必要と考えます。

〇社内で捉えられている現象面の問題
〇問題の結果の整理
〇問題の原因の整理
〇当該問題に対して実際にとった対策(何も対策を打たなかったを含め)
〇当該問題のあるべき解決策・注意しておくべきであった点 など

次回も引き続き、この議論をしていきたいと思います。

(浪江一公)