Top
> メルマガ:『価値づくり』の研究開発マネジメント

 

『価値づくり』の研究開発マネジメント 第280回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(127): KETICモデル-思考(69)
「発想のフレームワーク(12):過去の過ちを棚卸する(自分編)」

(2022年5月9日)

 

セミナー情報

 

現在「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にむけて、日々の活動の中でどうイノベーションを創出するかについて、議論しています。今回は、前回に引き続き、今考えている前提が間違っている場合として、前回提示した4つの場合の内「自分の誤った思考や経験に基づいていないか?」を議論します。

●時間的な経験・思考の制約への対処

前回は、「自分の誤った思考や経験」をもたらす要因として、自身が経験できる時間的な経験・思考の制約があることを述べました。そしてそこへの対処の方法として、過去について広く学ぶ重要性を議論しました。また、そこで、古今東西の過去に関する様々な研究に目を向ける必要性にも、言及しました。しかし、ここでのポイントは他人の研究から学ぶということであったのですが、よくよく考えると、自分自身もしくは自組織の過去から学ぶということへの価値も大きいことに気が付きました。また、むしろ関係性の大きさからいうと、こちらの方の価値が大きいかもしれません。

●自らの過去の失敗から学ぶ価値

「どんどん失敗をし、そこから学ぼう」という姿勢は、できているかどうかは別として、現在様々な場で奨励されていることです。これまでも、私もそのような発言をよくしてきました。しかし、もちろん未来に向かってこのような姿勢を持つことは重要なのですが、過去の失敗から十分に学んでいるかというと、そうではない例が多いように思えます。すでに、過去の失敗から発生するコストについては支払ってしまっている、もしくは支払わなければならいということは決まっているので、追加コストは発生しません。つまり、それらは既にサンクコスト化してしまっているので、追加コストが発生しない過去からの学びを最大化する価値は、大きいと言えます。

●過去の過ちを棚卸する

〇自分編

私自身、過去の失敗から十分に学んできたかと聞かれると、自信を持ってそうだとは言い切れません。もちろん、人間はそもそも過去から学ぶようにはできているので、そういうことは私自身が意識しているかどうかは別として、そうはしてきています。しかし、過去、特に過去の過ちから学ぶことを強く意識することで、より有意義なことを多く学べるような気がします。

新年などに、その年や今後の抱負などを考えるということをしている方は多いと思います。そこに、仕事、私生活、家族、趣味などに関し、過去の失敗の棚卸をする、すなわちそれらを言語化してリスト化することで、より良い抱負を創出することができるように思います。

ここで重要なことは反省をするのではなく、前向きに過去の過ちを考えてみるということです。反省しようとすると、「あんなことしなければ良かった」など、どうしてもネガティブに考えてしまいがちです。そうではなくて、これからより良い人生を歩むために、自分の過ちから学ぶことはないか、という姿勢で過去の過ちを棚卸するということです。

意外と簡単ではなさそうですが、簡単ではないがゆえ、意味のあることのように思えます。新年を待たず、さっそく私もやってみようと思います。

(浪江一公)