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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第252回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(99): KETICモデル-思考(41)
「知識・経験を関係性で整理する(29)-協調(2)」

(2021年3月29日)

 

セミナー情報

 

現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を議論しています(全体像は昨年の2020年1月27日第224回のメルマガをご参照ください)。そのメルマガ(第224回)のリストの中にはなかったのですが、あらたに「対立」を付け加え、前々回はその議論をしました。「対立」があればその反対の「協調」もあることになりますので、今回は前回に引き続き「協調」について考えてみたいと思います。(前回のタイトルは「調和」とありましたが、「協調」に変更したいと思います。)

●(その2)既存の低位の「協調」関係を壊す

通常、「協調」は良い意味にとられますが、「協調」にも悪い面もあります。お互いが、現状に妥協し、低い状態で平衡している状態などです。したがってそのような「協調」状況を打破すれば、より良い状況や関係を生み出す可能性があります。

●緊張によりダイナミズムを生み出す:イワシとナマズ

本当のことがどうかわかりませんが、よく組織の活性化法の比喩としてイワシとナマズの議論がされます。イワシを活魚輸送しようとすると、輸送の過程で皆弱って死んでしまうのですが、生け簀の中にナマズ(ナマズは塩水中でも生きる)を入れると、イワシは逃げ回り、生きた状態で輸送ができるということが言われています。組織もそれと同じで、異質でエネルギッシュな人材が入ると、組織が生き返るというものです。

●「協調」関係は、コストや制約でもある

組織以外に協調を壊すことで、より良い状況や関係が生まれる例があるのでしょうか。協調関係をコストや制約と捉えると、ダイナミズムを生みだすという想定が、より普遍化されます。

例えば、今日本は世界情勢の中で、米国と協調関係をもっています。第二次大戦後は旧ソ連に対し、現在では中国や北朝鮮からの軍事的脅威に対し、日米同盟という協調関係で対応しようとしています。しかし、現実には、米国と「協調」関係を持つということは、コストや制約でもあります。例えば、在日米軍の基地を許容するとか、予算の一部を負担しなければならいといったコストや、中国と良好な関係を築くことの制約になるといったことです。しかし、一つの思考実験として、米国との協調関係を解消して、日本がスイスのように永世中立国になる選択肢を考えてみるということもあるかもしれません。

事物においては、「協調」関係というのはあるのでしょうか。今、私の目の前には、机に載ったランプがあります。ランプは机によって支えられていますし、机はランプの載せることでその役割を果たしているので、両者は協調関係にあると言えます。しかし、ランプは机の上の面の15cm×15cm位の面積を占有していますので、それはコストや制約でもあります。両者の協調関係を変えて、なんらかの方法でランプを宙に浮かすことで、そのコストと制約を解消するということも考えられます。

このように「協調」関係は、拡大解釈は必要ですが、事物にも当てはまるように思えます。

●そもそもの協調の目的や得られる果実と協調のコスト・制約の両面を考えてみる

上でも議論したように、「協調」は多くの場合ポジティブな意味に使われるため、その意味を深く考えることなく、「協調」を盲目的に受け入れていたり、過度に重視しているということはないでしょうか。現状の協調の目的や得られる果実と、現状の協調のコストや制約をも考え、現状の協調状態が本当に最適なのかを自問することで、あらたなイノベーションが見つかることがあるように思えます。

(浪江一公)