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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第251回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(98): KETICモデル-思考(40)
「知識・経験を関係性で整理する(28)-調和」

(2021年3月15日)

 

セミナー情報

 

現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を議論しています(全体像は昨年の2020年1月27日第224回のメルマガをご参照ください)。そのメルマガ(第224回)のリストの中にはなかったのですが、あらたに「対立」を付け加え、前回はその議論をしました。「対立」があればその反対の「協調」もあることになりますので、今回はその「協調」について考えてみたいと思います。

●「協調」とは何か?

まず協調とは何かですが、辞書を見てみると「互いに協力し合うこと。特に、利害や立場などの異なるものどうしが協力し合うこと。」(Goo辞書)などがあります。また似たような概念である「調和」は、「全体がほどよくつりあって、矛盾や衝突などがなく、まとまっていること。また、そのつりあい。」(Goo辞書) また同様に類似概念である「親和」は、「1. 互いになごやかに親しむこと。なじみ、仲よくなること。2. 異種の物質がよく化合すること」(Goo辞書)などとあります。

そこで私は「協調」を以下のように定義することとしました。

異なる立場や性質を持つものどうしが、他方に対し調和的・親和的立場をとる状態

●「協調」からどうイノベーションを生み出すか?

協調というキーワードからどうイノベーションを生み出すかですが、大きくは2つの考え方があると思います。一つは、(その1)従来協調関係にない状態、特に対立の関係を解消し、協調関係を生み出すこと。もう一つが(その2)既存の低位の「協調」関係(平衡状態)を壊すことです。後者は、あえて対立を生み出し、両者やそれらの置かれた環境全体にダイナミズム(カオス)を生み出すこと、またさらにはそこからより上位の協調関係に至らしめることを狙うものです。

●(その1)従来協調関係にない状態、特に対立の関係を解消し、協調関係を生み出すこと

まず(その1)ですが、これはまさに前回「止揚」という言葉で説明した部分です。

もちろん「止揚」は簡単ではありません。複数のプレーヤーが関わる意思決定の研究分野に、「ゲーム理論」があります。その中で良く出てくるモデルに、「囚人のジレンマ」があります。「囚人のジレンマ」は、2人のプレーヤー(この場合囚人)がいた場合、独立して個別最適な意思決定をした場合、両者協調して意思決定した場合より、そこから得られる利得は小さくなってしまうというものです。

これは直観的にも、また個別最適より全体最適などと言われるように皆さんも認識され、納得できる事実ではないかと思います。また、自己のみを見て創出されたオプションの数に比べ、自己のみだけでなく相手も考えて創出されるオプションの数は当然多くなるので、最終の意思決定では最悪でも自己のみを考えたオプションを採れば良く、より大きな利得を得る可能性が高くなります。

●オープンイノベーションは「協調」により1+1を100にすること

前回議論した「対立」では、1+1〈 2ということになるのですが、現実には-100にもなりえます。互いに、対立をすることで、相手に大きな損害を与えることもあるからです。その一方で「協調」は、1+1 〉2となるのですが、「対立」とは逆に、互いに協力しあうことで100にもなりえます。まさに、これがオープンイノベーションの狙いです。

(浪江一公)