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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第247回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(94): KETICモデル-思考(36)
「知識・経験を関係性で整理する(24)‐包含」

(2021年1月12日)

 

セミナー情報

 

現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を議論しています。今回も前回に引き続き、「包含」について考えてみたいと思います。

●「常識を疑う」のではなく「常識以外を考える」

前回のメルマガでは、「パターン化からもたらされる一部を全体と考える誤り」について議論を行い、「Bに包含されているA以外を考える」重要性について指摘をしました。そこで言えるのは、良く「常識を疑え」などと言うことがありますが、常識を疑う、すなわち常識を全否定するのではなく、せっかく世の中や先人たちが考えてくれた常識があるのですから、その常識をB(全体)ではなくBの一部のAと捉え、Aを思考のきっかけとして活用して、常識以外を考えるというアプローチが有効であると思います。

このメルマガの中で何回も登場した概念に「隣接可能性」があります。この概念は、ある程度まとまった思考結果があれば、そこからさらにより正しい、真実に近い思考に進化させていくことが容易になるというものです。万有引力を思いついたニュートンが発した有名な言葉として、「私が遠くを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩に乗っていたからです。」があります。つまり、万有引力はニュートンの頭に天から降ってきたものではなく、先人の研究結果に基づきそれを進化させたことから生まれたというものです。

ここでのポイントは先人の研究結果が正しいかどうかは、あまり重要ではないという点です。例えば、研究というものは、先人の研究結果の中に矛盾点や疑問点を発見し、それを解決することで研究は進んで行くものです。その点からは、間違っていても先人の研究結果はその後の研究の進化に大きな貢献をするわけで、大きな意義があることです。その研究結果の矛盾点に気付かせてくれたからです。

●「常識以外を考える」ための2つのアプローチ

それでは、「常識以外を考える」にはどうしたら良いのでしょうか。私は2つのアプローチ、すなわち一つは確率論的なもの、もう一つは決定論的なものがあると思います。

〇常識以外のことがあるのかを現場で観察する(確率論的)

一つは常識以外の事例を、現場で探すということです。例えば、前回挙げた「中国人は〇〇である」という常識に対しては、〇〇でない中国人を探すことです。〇〇でない中国人が見つかれば、その常識は一部の現実を捉えているに過ぎないことがわかり、〇〇でない中国人の発見はイノベーション、すなわち前回の事例では常識とは異なるなる中国市場を攻める戦略において革新的な施策の創出を促進することになります。

〇そのような常識に至った原因を考える(決定論的)

もう一つは、なぜそのような常識に至ったかの原因を考えることです。その原因ではない、他の現象があれば、その常識は一部に過ぎないということがわかります。またその他の現象を見つけることで、常識とは異なる結果を想定することができ、こちらも革新的な施策創出を促進することになります。

●「包含」の重要性

以上のように、物事を「包含」関係で考えることにより、イノベーションを生み出す可能性が高まるという意味で、大変重要な関係性の概念であると思います。

(浪江一公)