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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第244回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(91): KETICモデル-思考(33)
「知識・経験を関係性で整理する(21)‐「原因と結果」を環状構造で整理」

(2020年11月24日)

 

セミナー情報

 

前回までは、第224回(2020年1月27日)のメルマガの「関係性の種類」の中の「原因と結果」の中の「逆ピラミッド」で整理する議論を、延々と19回分ものメルマガを費やしてしまいました。随分と長い間、横道にそれてしまいました。今回は元に戻り、「逆ピラミッド」のその次の「環状構造」(第224回(2020年1月27日)のメルマガ参照)で整理するについて議論したいと思います。

●原因と結果が環状に連鎖する

「環状構造」は、ある結果がそのもともとの同じもしくは同じ種類の原因となり、そしてその結果を生み...とぐるぐる循環する関係性を持つ構造です。

例えば、あるニーズ(原因)があるとすると、そのニーズ充足する方策を講じ、その結果一時的には満足をするものの、それが当たり前になりその状況に飽き足らず、新なニーズ(原因)が生まれるというような状況です。そしてそのニーズを充足する方策を講じ...と延々とその循環を続けます。(実はそのような循環する構造が人類の文明を発展させてきました。)

似たような例に、カイゼン活動があります。日々の活動の中で何等かの問題を見つけ、その問題を解決すると、次の問題が見えてきます。そうするとその問題を解決すると、次の問題が見えてくる...と言ったことが起こります。日々の活動の前提である周りの環境は刻々と変化しているために、枯れることのない泉のごとく新な問題の前提を作り続けていますので、このカイゼン活動は永遠に続くものとなります。

また、地球温暖化の問題など、環境の温度が高くなると、それを冷やすためにエネルギーを使って冷やすと、その結果二酸化炭素が増え、更に環境の温度が高くなり・・・なども原因の結果が環状にぐるぐる循環する例です。

●環状構造はインパクトが大きい

環状構造は良くも(好循環)、悪くも(悪循環)もその生み出すインパクトは、それが長期にわたり(*)、重層的に同じ方向に展開することで、大きなインパクトをもたらす可能性があります。そういう意味で、あまり関係性の整理の中で頻繁に出てくる概念ではありませんが、極めて重大な関係性と言えます。

*:短期ということもありえますが、延々と続くという性質から、長期にわたることが多いように思えます。(ただし、そもそも短期、長期は相対的なもので、物理的というよりむしろ心理的に長く感じるといったものかもしれません。)

●環状構造のインパクトを考えてみる

したがって、思考の整理として環状構造を考えるだけでなく、その環状構造の循環の外側にもたらすインパクトを同時に考えることが重要です。上のニーズの議論で言えば、人類の文明の発展ですし、カイゼンの例では、継続的な収益の拡大ですし、地球温暖化の問題は様々な害を生み出す地球環境の大きな変化です。

環状構造の前提やインパクトを与える先に何等かの限度があると、この循環はそこに至ると停止します。単純に停止する場合と、対象物の変質をもたらしたり、極端な場合には対象物の破壊や破綻(地球環境など)を生み出すことで破壊的に停止するということがあるように思えます。後者の場合には、そのインパクトは、大きな不連続なものとなります。

(浪江一公)