Top
> メルマガ:『価値づくり』の研究開発マネジメント

 

『価値づくり』の研究開発マネジメント 第235回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(82): KETICモデル-思考(24)
「知識・経験を関係性で整理する(12)‐外発的動機付けによる内発的動機付けの誘引(4)」

(2020年7月13日)

 

セミナー情報

 

現在エドワード・デシの4段階理論に基づき、外発的動機付けから内発的動機付けを誘引する4つの段階を議論しています。今回も引き続き、本テーマについて議論したいと思います。

●第3段階:同一化段階を実現するための活動

前回は、デシの提示する第3段階:同一化段階を実現するための活動として、「(その1)「有能感」への貢献:目的達成が自分自身の成長につながることを理解する」を議論しました。

しかし、会社から提示された目的の達成が自分の成長にはつながるとは思えないと感じた場合は、どうしたら良いのでしょうか?

1. とにかく目的に貢献することはないかと、より高い視点から広く考えてみる

現実には、会社から提示された目的の達成が、直接的に自分自身の成長にはつながらないと思えることは多いと思います。しかし、自分の成長に必要な要素をより高い視点から広くとらえる、たとえば、人やプロジェクトをマネジメントする能力を強化するや、顧客の潜在ニーズを引き出す技を習得するなどによって、仕事の中で学べることは多いものです。そのような視点から考え直すことは大きな意味のあることです。また、常にそのような広く高所から自身の成長機会を考えることができるということ自体も、「有能感」を持つための重要な要素と考えることもできます。

2. まずは自分が働くための糧を得る基本的な活動であると割り切る

会社から提示された目的の達成は、自分が働くための糧を得る基本的な活動であり、またその糧があれば、自分の好きな分野のことができる余裕がでると考えることで、自分を納得させることがあると思います。

会社側の工夫として、このような思考を促進する仕組みを設けるということがあると思います。そのような例が、3Mやグーグルの15%ルールや20%ルールです。また会社では管理上は嫌われることかもしれませんが、少額であれば本業の予算を15%なり20%ルールで行っている活動に回せるというような不文律があると良いです。

さらには15%ルールで行っている自分がやりたい仕事が、最終的に会社に貢献できる可能性が出てくれば、それは正式の活動として認められるわけですので、今は雌伏の期間として頑張ると考えることができます。

3. 転身を考える

上の1や2を徹底して考えた上で、どう考えても自分の有能感向上に貢献しないということになれば、むしろ積極的に転身する決断をするということも十分あります。私も仕事人生において、このような決断をした経験が1度ならずありますが、今思い返してみると、いずれもその決断をしたことは大変良かったと感じています。中にはその転身が、その転身に限定して言うと「凶」と出た経験もあります。転身には不確実性がかならずついて回るからです。しかし、「凶」とでた転身先でも、1や2を徹底して考えた結果、それは次の最終的に「吉」と出た転身の決断につながっています。

なにしろ自分が「有能感」を感じられるような場に身を置くことができれば、成功する可能性が極めて高く、転身で一度は失敗するというリスクがあっても、そのリスクをとる価値が十分あるからです。これは私が強く実感することです。

次回も引き続きこの議論を続けたいと思います。

(浪江一公)