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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第232回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(79): KETICモデル-思考(21)
「知識・経験を関係性で整理する(9)‐外発的動機付けによる内発的動機付けの誘引」

(2020年5月25日)

 

セミナー情報

 

前回は内発的動機付けと外発的動機付けについて、そして内発的動機付けが好奇心であるということについて、議論をしました。今回は、内発的動機付けを生み出すための重要な一つの方策である、内発的動機付けの外発的動機付けから誘引について議論をしたいと思います。

●内発的動機付けを直接的に持つことの難しさ

好奇心は、赤ちゃんが生後間もない頃から好奇心を持ち、また犬などの動物も好奇心を持っていることを考えると、人間を含む動物が、外界に適応して生き続けるため、きわめて重要な要素を学ぶツールとなっていると思われます。しかし、ある意味原始的なこの好奇心がどのように生まれるのかについてのメカニズムは、あまりわかっていないようです。そのようなこともあり、直接的に内発的動機づけを生み出すことは、難しそうです。

※:好奇心そのものを生み出す方法やメカニズムは、後になりますが、本メルマガのKETICモデルの(C:Curiosity)のところで、私なりにチャレンジして考え、議論をしたいと思います。

●外発的動機付けによる内発的動機付けの誘引

しかし、心理学の研究においても、外発的な動機付けが内発的な動機付けを誘引するということが、わかっています。例えば、企業の研究所において、ある新しい分野の研究を強制され、当初は自分自身関心が持てない分野においても、その分野の研究を進めることによって、その分野の研究自体に興味を持つようになるといことは、大変良くあることです。むしろ大半はそのように関心、好奇心を持つようになるということではないかと思います。この点については、多くの人が経験していることと思います。

●デシの四段階理論

心理学者であるデシは、外発的動機付けによる内発的動機付けの誘引の段階を、4つの段階で議論をしています。

〇第1段階:むりやりやらされていると感じる段階
本人はやりたくない、やる必要性を感じていない中で、外部の強制力でやらされている段階。

〇第2段階:注入段階
強制されているからではなく、一応自分の意思でやっている段階。やらないと会社での評価が悪くなる。昇進に差し障るので、やるなどの例にあたります。ネガティブな要素の解消のための、一応主体的な行動をとる段階です。

〇第3段階:同一化段階
目的達成のためには、これをやらなければならないと、今やっていることの価値や利点(ポジティブな要素)を認識している段階。しかし、あくまでも目的達成の手段として考えているだけであり、外的動機付けによって活動している段階。

〇第4段階内発的動機付けされた段階
やっているうちに、その目的達成をおいておいても、この活動自体が面白いなと感じる段階。

引き続いて次回では、どうすれば第4段階に至らしめることができるのか?について議論をしたいと思います。

(浪江一公)