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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第230回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(77): KETICモデル-思考(19)
「知識・経験を関係性で整理する(7)-高い目標を設定する意味」

(2020年4月20日)

 

セミナー情報

 

現在KETICの最初の2つ、知識(Knowledge)と経験(Experience)に基づき、思考力(Thought)を強化する方策を議論しています。また思考の関係性の中の「原因の結果」の関係の類型の4つの種類の内、3つめの逆ピラミッド(第224回参照)の「逆ピラミッドが起こる3つの要件」(第227回参照)の中の、「要件3:多様な思考パターン」を実現するための「多様な思考パターンを生み出す3つの方向性」を議論してきています。

今回は3つの方向性の中で、2つ目の方向性の「●個人単位で日頃から数多くの思考パターンを生み出す努力を重ねる」について議論をしています。

●個人単位で日頃から数多くの思考パターンを生み出す努力を重ねる

「個人単位で日頃から数多くの思考パターンを生み出す」には、個人として日頃から考える機会を多く持つことではないかと思います。幸いなことに、人間の脳は、厳しい環境を生き延び、また脳を省エネ運転するために、そもそも思考の経験をパターン化するようにできています。

個人として日頃から考える機会を多く持つには、「課題意識を持つ環境に自らを置く」と「思考するクセを付ける」があると思います。以下に「課題意識を持つ環境に自らを置く」を本日から議論したいと思います。

●課題意識を持つ環境に自らを置く

考える機会を持つには、なんらかの強い課題意識がないと、人間は考えない生き物です。なぜなら思考には、エネルギーが必要で、そのエネルギーに相応しい対価がないと脳は動き出さないからです。したがって、自分自身に強い課題意識を生み出すような環境に、敢えて身を置くことが重要となります。

課題には、Gain(利得の機会)とPain(苦痛の解消)の両面があります。Gainに関する課題は、自分自身に『追加的』になんらかの益をもたらす上での阻害要因の解決です。そしてPainに関する課題は、現状の苦痛への対処を困難にしている要因の解決となります。

まずはGainに関わる課題から議論をしていきたいと思います。

●Gain:自分の望むものを得る環境に身を置く

自分自身の望む物を得る環境は、その明確性から2つに分けられるように思えます。1つは、自分自身が望む明確な高い目標を持つことです。もう1つは、目標程明確ではないのですが、何かわからないが、知りたい、経験したいという好奇心があります。本日は、「自分自身の高い目標を持つ」から議論をしたいとい思います。

〇自分自身の高い目標を持つ

様々な書物や成功した人達によって、モチベーション向上のために、人生の長期計画を立てることが勧められています。ありたい自分を設定することで、現状とのギャップが明確になり、そのギャップを越えることが個人にとって大きな課題となります。企業においても、経営ビジョンやミッションを明確する理由は、そこにあります。

目標を設定しないと、課題は生まれせん。目標を設定する意味は、目標それ自体よりも、日々そこに向かっての課題を認識させることにあるのではないかと思います。それにより、その課題解決の方策を常に探るようになる。そうすると様々な関連することを学習し、またそこから何等か意味、すなわち様々な思考パターンを生み出すことができるになると思います。

ここで重要なことが、日々考え続けるためには、誰か他人から強制されるのではなく、目標は自分自身が主体的に設定しなければならないことです。「そろそろ勉強しなければならないな」と思っている時に、親から「勉強しろ」と言われると、一挙に勉強する意欲が削がれるという経験を誰しもしていると思います。まさに「Not Invented Here Syndrome(自分が発明したのではないので、関心が持てない)」という状況です。モチベーションを高く維持して、常に課題解決に取り組む姿勢を持つには、目標設定の主体性が極めて重要です。

(浪江一公)