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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第228回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(75): KETICモデル-思考(17)
「知識・経験を関係性で整理する(5)」

(2020年3月23日)

 

セミナー情報

 

現在、第224回に議論した関係性の種類を議論しています。前回は関係性の種類の1つの、「原因と結果」の中の「逆ピラミッド(複数の原因→1つの結果)」が起こる3つの要件の内、「要件1:多様な知識・経験を持つ」と「要件2:『超』俯瞰的視野を持つ」を議論しました。今回は「要件3:多様な思考パターン」を議論したいと思います。

●要件3:多様な思考パターン

「要件2:『超』俯瞰的視野を持つ」で様々な相矛盾するような知識の系を頭に入れるという議論をしましたが、現実には、例えば系23のある知識とそれと相矛盾するような系1045のある知識を『新結合』するということは、自分の頭の中であっても簡単ではありません。なぜなら膨大な組み合わせが存在する訳で、人間の脳でそれを全て行う事は不可能です。

また、一人一人の個人は誰しも、それまでの経験から生み出された固有の、言い換えると偏った思考パターン、思考のクセを持っているもので(それらの思考のクセはポジティブに考えると、上で述べた膨大な組み合わせの数を少なくするためのものとも考えられますが)、そのような固定的な思考が更に『新結合』を制約します。

そのため、『新結合』の機会を増やすには、できる限り多様な思考パターンを持つことです。それでは、どうしたら多様な思考パターンを持つことができるのでしょうか?

●多様な思考パターンを生み出す3つの方向性

私は、以下の3つの方向性があると思います。

○思考パターンの固定化という問題を意識し、思考パターンを拡大する強い意志を持つ
○個人単位で日頃から数多くの思考パターンを生み出す努力を重ねる
○他人の思考パターンを学ぶ

以下に一つ1つ議論をしたいと思います。

●思考パターンの固定化という問題を意識し、思考パターンを拡大する強い意志を持つ

○人間の思考はパターン化しマイオピア(近視眼)に陥るもの

人間の脳は、思考がパターン化されるようにできているように思えます。人間の学習や経験は、最終的には思考パターンという形で知識化され、頭に定着することで一連のプロセスは完了します。そして人間は、その後類似する状況に遭遇した場合には、間の知識化のプロセスをすっと飛ばして、それら既に頭の中に形成された思考パターンに基づき判断を行い、対処します。それにより、瞬時にそれら状況に対処することができるという効果があります。これは、太古から厳しい環境を生き抜く、人間の特徴でしょう。

一方で、様々な状況において、自身の頭の中で固定化された限定的な思考パターンを当てはめてしまうというマイオピア(近視眼)を生み出します。欲求五段階説で有名な、マズローの言葉に、「金槌しかもっていないと、全ての問題は釘に見える」というものがあります。まさに限定的な思考パターンしか持っていないと、常にその思考パターンに拘泥してしまうということです。

上でも述べたように、思考のパターン化は決して悪いものではありません。しかし、問題は数少ない思考パターンに無意識の内に拘泥してしまうということです。そのため、日頃からこの人間の本質的な問題(マイオピア)を意識し、思考パターンを拡大しようとする強い意志を持つことです。

それではそのような意思を持つにはどうしたらよいのでしょうか?それは、自分や自組織がいかに固定的な思考パターンに基づき思考してしまっているかを自覚することです。自分や自組織の固定的な思考パターンを認識する活動を「ばかり分析」と呼んでいます。次回はその議論をしたいと思います。

(浪江一公)