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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第225回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(72): KETICモデル-思考(14)
「知識・経験を関係性で整理する(2)」

(2020年2月10日)

 

セミナー情報

 

前回から時系列や物理量で整理した知識を、更にそれらの関係性を考えることについて議論をしています。今回もその議論を続けます。前回は関係性をいくつかの種類に分け、その最初の項目の「原因と結果」を更に4つの類型に分けました。今回は「原因と結果」の最初の類型の「リニア(1つの原因→1つの結果)」について、議論します。

●リニア(1つの原因→1つの結果)の連鎖の例:「風が吹けば桶屋がもうかる」

前回のメルマガで、これは「風が吹けば桶屋がもうかる」構造と説明しました。この話は皆さんもご存じの通り、風が吹くと土埃が舞い、盲人が増え、盲人はその昔三味線で生計をたてていたので、三味線が売れるようになる。そうすると、三味線に使われる猫の皮の需要が増え・・・、と1つの原因が1つの結果を生み、その結果がまた原因となり、別の結果を生む、といったような連鎖を示しています。

●リニアで1つの原因が1つの結果を生む連鎖を考える場合の重要な視点

革新的なアイデアを創出するための前提を作る場合に、このリニアの思考の連鎖で重視しなければならない点が、丁寧に原因と結果の関係をより完全な形で表現することです。それはなんのためかと言うと、既に認識されている連鎖の関係性の不完全性を補い、その連鎖をより完全な形で表現することにより、補強された部分も含めて、詳細に表されているリニアの原因と結果の関係性の連鎖が、より多くの革新的なアイデアの源になるということです。

これを別の視点から言うと、不完全な形ではあるけれども、既に1つの原因と結果もしくはその内の1つが認識されているので、そこを出発点に未認識の「結果」(そしてそれがまた原因となる)を発想することは容易なことであると言うこともできます。

○重要点1:「原因」の「本質」を考え言語化する

上の例では、「風が吹くと土埃が舞う」という説明となっていますが、「風が吹く」と「土埃が舞う」との間には、現実にはまだその原因がもたらす未認識の結果(またそれが原因となるのですが)があります。その未認識の結果を見つけるために、まずは「風が吹く」とは本質的にどういうことかを考えます。「風が吹く」とは、そもそも「空気という質量を持ったものが移動する」ということです。したがって、そのように、「風が吹く」の「本質」を言語化します。

○重要点2:既に認識済の原因と結果の間の欠けている結果と原因(またその結果が原因となる)の連鎖を記述する

次に「空気という質量を持ったものが移動する」という原因により、どのような結果がもたらされるかを考えます。結果として他のもの(気体、液体、固体)に作用し、それらを動かすという結果をもたらします。(実は他に、変形させたり、摩擦熱を生み出すなどの結果を生み出すのですが、それはまた後に議論する「ピラミッド(1つの原因→複数の結果)」で議論します。)

実は、土埃は作用する固体の一部に過ぎません。風は土埃だけでなく、様々なもの(固体、液体、気体)を動かすという効果があることが、ここから知ることができます。

この重要点2は、上の重要点1で「原因」の「本質」を考え言語化することができているため、比較的容易に作業を進めることができます。

(浪江一公)