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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第220回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(67): KETICモデル-思考(9)
「知識・経験を物理量で整理する(1)-整理の為に考える要素」

(2019年11月25日)

 

セミナー情報

 

前回までは、知識や経験を時系列で整理するという話をしてきましたが、当然時系列以外の物理量という軸があります。今回からは「知識・経験を物理量で整理する」をテーマに、議論をしていきたいと思います。

●物理量とは
ネットで調べると物理量とは、「物質系の物理的な性質・状態を表現する量。普通、一個の数値または一組の複数個の数値によって表され」とあります。ただし、ここでは物質系だけでなく、感覚や心理など非物質的なものも含めたものと、もう少し広く捉えたものとして議論していきたいと思います。

またその対象も、本メルマガの大きなテーマが「普通の組織をイノベーティブにする処方箋」ですので、もっぱらイノベーションに結び付く物理量を対象にすることとします。

●イノベーションに結び付く物理量とは何か?:3つの視点
イノベーションの定義は、このメルマガの連載を通じて、企業を対象として「今まで存在していない大きな顧客価値」と定義しています。私のセミナーにご参加いただいた経験のある方は、いつもセミナーの最初でご説明しているものです。従って、市場側の話にしても、技術側の話にしても、イノベーションに結びつく物理量とは、大きな顧客価値、競争の回避(「今まで存在していない」に相当)に結び付くものとすることができます。

それに加え、このイノベーションの定義はコスト面の要素が入っていないので(すなわち大きなコスト低減をもたらすもの)、もう一つコスト低減を加え、大きな顧客価値、競争の回避、大きなコスト低減の3つに貢献する物理量と考えたいと思います。

●そのような物理量が多い、少ないを議論するための対象の分割
物理量の多い、少ないで知識・経験を整理するには、複数の対象のセグメントを決めないといけません。そのためには切り口が必要です。切り口を考える上では、以下の2点を考える必要があります。

○「3つの視点」への貢献の物理量の大小
あるセグメントの物理量は大きいが、別のセグメントの物理量は小さい、あるセグメントの物理量はその中間といったようなものです。その物理量の差が際立つような切り口が適正な切り口となります。

例えば、市場での議論であれば、あるポイントについての困り具合の差などがあります。ある市場セグメントの人達はその点について大変困っている、別の市場セグメントの人達は全然困っていない、とったものです。この場合物理量は困り具合となります。

このように、上の「3つの視点」を規定する代表的な物理量において大小の大きな差が出てくる切り口が、優れた分割の切り口と言うことができます。

○物理量を生み出すドライバーの相違
しかし、そのような「3つの視点」を規定する物理量において、その大小の差が出てくる切り口と物理量が見つかり、そしてそこに基づき対象をセグメントに分割しても、同じセグメントであってもその物理量を拡大する要因、すなわちドライバーが異なれば、それはその対象のセグメントを更に分けなければなりません。

(浪江一公)