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『価値づくり』の研究開発マネジメント 第218回

普通の組織をイノベーティブにする処方箋(65): KETICモデル-思考(7)
「知識・経験を時系列で整理する(5)-守破離」

(2019年10月28日)

 

セミナー情報

 

今回も、前回同様、「思い付く」ための「知識・経験を整理するフレームワーク」の中の、知識・経験を時系列で整理する「期」ついて議論をします。

●守破離とは

芸の世界に守破離という言葉があります。この守破離も、期、すなわち時系列を表す1つの興味深い切り口を表しています。

「守破離は、日本の茶道や武道などの芸道・芸術における師弟関係のあり方の1つであり、それらの修行における過程を示したもの」(ウィキペディア)と説明されていて、守破離それぞれは、次のような段階を意味しています。

「守」では、師匠からその宗派の基本形を徹底的に学ぶ段階です。すなわち、既存の形を「守って」体得するものです。

次の「破」は、その宗派の基本形に拘泥することなく、すなわち既存の基本形を破り、その宗派の基本形の問題点や限界を考え、また広く他の宗派のことについて学ぶ段階です。

最後の「離」は、「破」で得られた学びに基づき、自分自身の基本形を構築する段階です。

●守破離からの学び

この守破離は、芸道・芸術の分野のみならず、以下のように活動が発生する分野での、より普遍的な段階を示しているように思えます。

○「守」の段階
既存の常識、ルール、前提、役組、制約に基づく、活動の段階と考えることができます。

「守」というと、スタティックはイメージがありますが、既存の枠組みの中では、それを前提としながらも、ダイナミックな動きもあります。イノベーションを斬新的イノベーションと破壊的イノベーションに分ける考え方がありますが(例えば、クレイトン・クリステンセン)、新しいアイデアを創出すると定義されれるイノベーションの活動に関しても、まさに「守」の段階で起こるのが斬新的イノベーションと言えます。

○「破」の段階
この段階では、「守」の段階で起こった様々な活動やその結果が、既存の枠組みの中でそろそろ飽和状態になり、既存の枠組みの限界や問題が見え、また認識され、新しい枠組みの必要性が感じられるような状態です。組織で言うと従来のやり方や価値感に対し不満のマグマが溜まり、最後には爆発する段階であると言えます。

この段階では、従来の枠組みの外側でのいろいろな考えの萌芽が見られ、それらが試されるということが積極的に行われるという状況です。

○「離」の段階
この守破離の最後の段階では、貯まったマグマが既に爆発し、「破」の段階でいろいろと試された、新たな方向が最終的に確立し、その方向で、新しい世界が始まるという段階です。

●守破離は繰り返す

「離」が起こった後は、それがまた既存の常識、ルール、前提、役組となり、また新たな制約も創出するようになります。すると、その後にもまさに新たに守破離のプロセスがスタートすることになるというものです。したがって、このような守破離のサイクルは多くの場合何度もエンドレスにぐるぐる回っていくことになります。

(浪江一公)