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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第185回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋(32):KETICモデル-知識:外部技術(4)

(2018年7月2日)

 

セミナー情報

 

今回も前回に引き続き、「その1:自社のコア技術の補完技術」を探す方法としての自社のコア技術の発信について、議論をしたいと思います。

●コア技術の未活用部分をどう見つけるか?

前回の議論では、技術機能展開法を用いて、自社のコア技術でできること、すなわち機能を目いっぱい考えて広げようという話をしました。この方法では、外部への発信内容は、「自社のコア技術ではこんなこともできます」ということで、自社のコア技術の新用途を『自社が考え』そしてそれを外部に発信をしようというものです。

しかし、現実には、『自社の考えの及ばない』新用途も沢山あるわけで、当然それら『自社の考えの及ばない』新用途も見つけたいという強いニーズがあります。そのような用途を見つけるには、どうしたらよいのでしょうか?

●コア技術をパートナーに五感で感じてもらえる場の提供

そのための方法が、パートナーに新用途を見つけてもらうことを目的に、パートナー(候補)に自社の技術を五感で感じてもらえる場を作ることです。このような場を世界で最初に作ったのが、日本の住友3Mです。そのような場を、同社はCustomer Technical Center(CTC)と呼び、日本では東京郊外の相模原に保有しています。その後、このCTCの概念は3Mの全世界の活動に組み込まれ、現在3Mには世界中に同様の拠点が30以上もあります。また日本でもこの概念を真似て展開している企業が、少なからずあります。

●技術ショールームは、パートナーに自社技術を「そのまま感じてもらう」場

もちろんこのような技術ショールームは、自社の技術を『自社が知っている』有用なポイントをアピールするということが目的としてはあるのですが、上で議論したように、『自社が知らない』技術のポテンシャルをパートナーに、もしくはパートナーと一緒に見つけることも重要な目的です。したがって、このような場においては、自社の技術を『アピール』するのではなく、自社の技術をそのままパートナーに『感じてもらう』工夫が極めて重要となります。

●多くの企業の技術ショールームの問題:きれいすぎる展示

私は、時々日本企業の技術ショールームを拝見する機会があるのですが、多くの日本企業の技術ショールームは「きれいすぎ」ていて、強い違和感を感じます。そこでは製品ショールームと同じ様に、その技術を使って実現されたキレイな製品のディスプレーが用意されていて、一言で言うと「無機質」な展示になっています。そして、そのような技術ショールームは、多くの場合、鳴り物入りで導入されたにもかかわらず、閑散としていて閑古鳥が鳴いているものです。

●あるべき技術ショールーム:ひっくり返されたおもちゃ箱

私は技術ショールームでは、面白そうなものがあちこちに散在している「ひっくり返されたおもちゃ箱」のような状態が実現されていることが、重要であると考えています。パートナーが足を踏み入れた瞬間に、面白そうな技術があちこちにあり、ワクワクするという状況です。まさに、子供が沢山のおもちゃ、その中にはクビのとれそうなぬいぐるみや、タイヤが取れた自動車のおもちゃもあるかもしれませんが、そのようなおもちゃの山に接して、わくわくするという状況です。そしてパートナーがそれら技術で実現された様々なものを手にとって、自分の手でいじくりまわし始めるという光景が見られるのが理想です。

(浪江一公)