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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第169回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋(16): 「常識」を書き換える

(2017年11月13日)

 

セミナー情報

 

前回は、「常識を継続的に書き換える3つの活動」の中の2つ目の「社内にある「常識」の棚卸」について、議論しました。今回は、最後の3つ目の「常識を書き換える活動を組織の定常活動として組織に組み込む」の議論をしたいと思います。

●思考態度や思考習慣の必要性

前回も引用した水平思考で有名なエドワード・デボノの発言に、以下があります(デボノの言う水平思考とは、一つの既知のことを突き詰める垂直思考に対する言葉で、従来の思考様式、すなわち「常識」に囚われることなく思考の対象を広く水平に展開し、イノベーションを起こすための思考法のことを言います)。

水平思考は、すぐに学びとれてすぐに応用のきく、魔法のような思考方式ではない。それはある種の思考態度であり、思考習慣である。

出所:「水平思考の世界」、エドワード・デボノ著、白井實訳、講談社、P.29

それでは従来の常識をぶち破り、水平思考をするためには、どのような思考態度や思考習慣が必要なのでしょうか?

●本質を常に追求する姿勢

私は、それは本質を常に追求する姿勢であると思います。なぜ本質の追求かというと、水平思考は思考の平原を広く水平に捉えようとするものですが、そこには何かしらの制約、言い換えると押さえが必要になります。求められる制約とは、そもそもの発想の目的や、その目的に行き着くための知識の本来的な意味、すなわち「本質」です。そのような「本質」という制約がないと、いくら水平思考と言っても、思考の対象領域は無限に拡散してしまします。

本質を突き詰めるという姿勢は、水平思考とは真逆に思われるかもしれませんが、本質とは本質ゆえに「何にでも汎用できる」ものであり、そこを拠り所にすると、逆にそこから思考が広がるからです。また従来は、上で言う制約を「常識」に求めていた訳ですが、「常識」はほとんどの場合「本質」ではありません。従来の思考法は、そこが問題なのです。

●ホンダの本質追求の重視

常に本質を追求する姿勢を大事にする企業に、ホンダがあります。ホンダでエアバッグを開発し、最後は経営企画部長をされた小林三郎氏は、同氏の著書の中で以下のように述べています。

本田技術研究所に巣食う異端者たちの中にある種のすごみを感じるようになった。例えば、こんなときだ。安全シートの試作品を設計して試作課に持っていったら、板金担当のオジサンが「A00(本質的な目標)は何だ」と聞いてくる。「はい。性能向上、重量低減、コスト削減です」と答えたら、「あんちゃん、それは全部違うなあ。その三つで何をしたいかがA00だろ。おまえ、お客の安全を向上したいんじゃないの。

出所:「ホンダのイノベーションの真髄」、小林三郎著、日経BP、P.114

その他、同じ自動車業界のトヨタも「なぜを5回問う」という姿勢を重視しています。これも本質の追求の姿勢と思います。

次回も引き続き、「常識を書き換える」を考えてみたいと思います。

(浪江一公)