『価値づくり』の研究開発マネジメント
第152回:オープンイノベーションを成功させる(2): 自社の強みを設定する
(2017年3月13日)
前回は、オープンイノベーションを成功させるためのビジネスモデルの必要性を議論しました。今回は自社の強みの設定について議論したいと思います。
●自社の強みは更に強化し、そうでないものは外部に求める
ここまでに議論してきたように、オープンイノベーションの対象は技術だけではありません。市場の知識、製品企画・設計、製品そのもの、能力もオープンイノベーションの対象となります。それでは外部に求めるものは何なのか?それは、自社が本来自社で維持・強化すべきもの(すなわち強み)以外ものです。
すべてを外部に求めるようであれば、必ず事業においては競争が存在しますので、自社が市場で勝ち、さらに高い利益率を実現することはできません。オープンイノベーションの時代においても、自社の強みは絶対に自社に温存しなければなりません。一方で、自社の強み以外は、外部に自社より優れた企業が沢山あるのですから、逆に外部を使わない手はありません。
そのために、自社が守るべき強みはなんであるのかを突き詰め、決定しなければなりません。
●強み設定の軸:VRIO
それでは、自社の強みとはどのようなものなのでしょうか?それについては、米国のオハイオ州立大学の教授であるジェイ・バーニーが提唱する、VRIOがあります。VRIOとはValue、Rearity、Imitability、Organizationの4つの単語の頭文字から構成されるものです。以下に一つ一つ説明したいと思います。
○Value(経済価値)
何を自社に残し、何を外部に求めるかを決定する拠り所としての自社の強みは、最終的に収益に結び付くものでなければなりません。企業が経営を継続的に行っていくためには様々な能力が必要ですが、それらがすべて収益に同じように貢献するわけではありません。自社の強みは、特に収益に大きく貢献できるものである必要があります。
○Rearity(希少性)
仮にある能力が自社の強みと認識していても、同じように多くの他社がそのような強みを持っているのでは、自社の本当の強みとは言えません。むしろその場合、能力の最も高い企業に依存した方が良いかもしれません。
○Imitability(模倣(困難)性)
その強みが自社独自のものであっても、他社に簡単に模倣されるようなものであれば、それは今は強みかもしれませんが、今後事業を展開する中強みではなくなってしまう可能性は大きいのです。したがって、自社の強みには模倣困難性が求められます。
○Organization(組織)
自社に上の3つを満たすような強みがあるにしても、組織の中にその強みを発揮し、最終的に収益という経済価値に転化させる能力を保有していなければ、現実には強みとは言えません。つまり「宝の持ち腐れ」です。自社にはその強みを生かし、高収益を実現する組織力・経営力が備わっていることが求められます。
●強みの設定における未来志向の重要性
しかしここで自社の強みの設定において、極めて重要な点があります。それは、自社の強みとは未来永劫同じ強みに依拠するということではだめで、自社の強みは未来志向で設定することです。この点については、次回に引き続き議論をしていきたいと思います。
(浪江一公)