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日本企業復活の処方箋「ステージゲート法」

第99回:多様なソースから情報・知識を集める(その14)
情報・知識の『源』を多様化する(13):オープンイノベーション-価値づくりの原動力

(2015年2月2日)

 

セミナー情報

 

今回は、情報・知識を多様化するコンセプトとしてのオープンイノベーションについて、議論をしたいと思います。

●オープンイノベーションとは?
オープンイノベーションとは、ハーバード・ビジネススクールのヘンリー・チェスブローにより提唱された概念で(2003年に同名の書籍が出版)、革新的な製品やビジネスモデル構築において、外部のアイデアや能力を積極的に活用しようというものです。

この概念は世界中で企業や研究機関に大きなインパクトを与え、オープンイノベーションが企業でとるべき主要戦略として語られるようになりました。日本企業においては、その動きはまだ限定的ではありますが、欧米企業においては、オープンイノベーションは半ば、経営における常識となっています。

●なぜオープンイノベーションに価値があるのか?

なぜこれほどオープンイノベーションが企業戦略の中で、重要な位置を占めるようになったのでしょうか?その理由には以下があるのではないかと考えています。

○顧客は製品ではなく価値を買う
このメルマガの中で再三触れてきたことですが、その本質において顧客は自社の製品やサービスを買うのではなく、その顧客にとっての「価値」を買うということがあります。その「価値」は、自社が持つ知識や能力とは全く独立して、決まります。なぜなら、「自社」ではなく、第三者である「顧客」が「価値」と認識して初めて「価値」になるからです。したがって、その価値を生み出し、実現するには、自社の保有する知識や能力では不十分ということが、『必ず』起こります。

○ゲームのルールは「ものづくり」から「価値づくり」へ
そして、今、世の中のゲームのルールが「ものづくり」から「価値づくり」に変わってきていることがあります。「ものづくり」とは、製品を作るに当たり自社が保有する知識や強みを利用して、そこに立脚して製品を生み出すという考え方とも定義できます。しかし「価値づくり」は、顧客が価値を感じてくれるものは何かから出発し、その価値を最適な形で提供できるものを、自社の知識や能力が活用できないところでも様々な工夫を重ねることによって、その「価値」を実現するというものです。

つまり「ものづくり」から生まれるものは、自社の専門領域の知識や強い能力という「制約」を前提としています。そのため実現できるもの限定されます。しかし、「価値づくり」の前提は、「顧客が価値を認識してくれるものを提供する」が唯一であり、それは制約でもなんでもなく、むしろそれは企業活動の目的そのものであり、企業の行くべき正しい方向を広く差し示してくれるものです。すなわち「価値づくり」の視点をもてば、「ものづくり」に比べ、何十倍、何百倍もの新しい価値提供の機会が生まれるということです。

○自社の知識・情報、活動範囲や能力は限定的、一方で世界は広い
自社のその分野での知識、活動、能力が仮に世界的にも第一級であったとしても、必然的にそれは世界中に存在する中の一部に過ぎません。したがって、今後の継続的な「価値」の創出や実現のために重要で、自社にはない知識や能力は、世の中に広く存在する可能性が高いのです。

世界には、70億人もの人が存在します。「価値づくり」に向けて、それらの人達の知識や能力を活用しない手はありません。

それでは次回は、これら70億人の英知をどのように活用するかを議論します。

(浪江一公)