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日本企業復活の処方箋「ステージゲート法」

第97回:多様なソースから情報・知識を集める(その12)
情報・知識の『源』を多様化する(11):「顧客の顧客」;顧客だけを見ていては顧客は見えない

(2015年1月5日)

 

セミナー情報

 

今回は情報や知識を集める対象としての、「顧客の顧客」について議論をしたいと思います。

●「顧客の顧客」を知る価値

今や顧客の先方の明示された要求に応えるだけでは不十分であることは、研究開発活動の常識となっています。そこには大きく2つの理由があります。まず1つ目に、顧客が自社に要求するということは、他社にも要求している可能性が大きく、即競争となるからです。2つ目に、顧客は、多くの場合顧客自身についての課題を明確に持っておらず、それはそもそもいずれの顧客も自社に関わる全ての課題をその時点で把握することは不可能だからです。したがって、自社として顧客が気が付いていない課題に対する解決策を提示する余地は必ず存在します。それにより顧客に対し『追加的』な価値を自社のみが提供することができ、その場合競争もなく、大きな対価を得ることができます。

顧客が気付いていない課題を知るための最も重要な活動の1つが、「顧客の顧客」を知ることです。「顧客の顧客」を知ることで、顧客の気付いていない課題を認識し、その解決策を提供することができます。

しかし、多くの企業にとって顧客の顧客を知る活動には、二の足を踏むものです。なぜなら、自社の直接の対象である「顧客」が誰かは比較的明確になっていますが、「顧客の顧客」が誰かについて具体的レベルで把握ができていないからです。それに、「顧客」の数に比べ、「顧客の顧客」の数は、通常大変多い。どこから料理して良いか分からないのです。

●他社が二の足を踏むからこそやる価値がある

しかし、いずれの産業分野でも、「競合企業と同じこと」を「よりうまく」やるだけでは、競争に勝ち残り高収益をあげ続けることはできません。むしろ他社が二の足を踏むような(価値がある)活動をすることが、生き残りには必要となります。「顧客の顧客」を知る活動は、まさにその典型的な活動です。

多くの企業で、顧客のことも分かっていないのに、「顧客の顧客」を知る活動などは、先の先の活動だと考えるかもしれません。しかし、その考えは間違っています。むしろ「顧客」だけを見ていては、「顧客」のことを理解することはできません。

●実はそれほど難しくはない。やればやっただけの価値はある

加えて、実は、「顧客の顧客」を知る活動は、それほど難しいものではありません。もちろん、最初から理想的な活動をすることは困難でしょう。しかし、何らかの活動を行えば、それなりに「顧客の顧客」のことが見えてくるものです。それは従来の「顧客」のみに目を向けるだけでは見えなかった、目からうろこが落ちるような経験が必ずある筈です。これから終りのない長期的に積み重ねていくような活動の第一歩として、歩み始めれば良いのです。そのような地道な活動を積み重ねることにより、「顧客」を複眼的な視点から見えるようになり、「顧客」の理解は従来に比べ遥かに大きくなります。

●「顧客の顧客」を広義に捉える

「顧客の顧客」を知る活動の必要性は、B2B製品に限定されません。ちょっと不思議に思うかもしれませんが、多くのB2C製品にも存在します。例えば典型的なB2C製品のブランド品。顧客はその製品を持つことで、周りの人達からかっこよく見られたいなどのニーズがあります。ここでは、広義に考えれば周りの関係者を「顧客の顧客」とも考えらます。この議論は引き続き次回も行いたいと思います。

(浪江一公)