Top
> メルマガ:日本の製造業復活の処方箋『ステージゲート法』

 

日本の製造業復活の処方箋「ステージゲート法」

第8回:ゲートの運営(その1)

今回から数回にわたり、ステージゲート法において最も重要な活動であるゲート運営についてお話をしたいと思います。今回はゲートの全体像について議論をします。

■ゲートの位置づけ
 ゲートとは、言うまでもなく門、もしくは関門という意味です。ゲートの前のステージから、次のステージに進むための関門です。この関門(ゲート)では、前のステージでの活動を評価し、また次のステージに進む価値があるのか、その用意ができているのかを評価し、それら評価結果がイエスであれば、次のステージに進むことを承認します。同時に、次のステージ実行に必要な経営資源をプロジェクトに提供することを約束します。

 ステージゲート法においては、製品の上市までに複数のステージがありますので、ゲートも複数置くことになります。

■ゲートの関係者は誰か?
  ゲートの活動の関係者は以下のような人たちがいます。

●ゲートキーパー
 まず、プロジェクトの評価者です。上で述べた評価を行う人たちです。通常は経営者や関連する部門に籍を置く複数の人たちがプロジェクトを評価します。ステージゲートは、技術面だけの評価の手法ではなく(デザインレビューとは異なります。この点の議論はまた別途行います)、事業の視点から評価を行うものですので、事業に関係する複数の部門(研究開発、事業部技術、マーケティング、生産、事業開発等)の人たちが関与します。

 また、当然のこと革新的な製品を事業として成功させることは、簡単なことではありません。また、そのような製品を(継続的に)展開することは、企業の根幹の活動ですので、それこそ、企業の周知を集めて、全ての能力を上げて成功に向けて行う活動です。このような活動全体の中で、ゲートは関係者の重要な意思決定の場であり、極めて重要な役割を担います。

 その為に、ゲートには事業に関係する様々な部門の人たちが評価に参加し、適正な評価を行い、また同時にゲートでは適切なアドバイスをしなければなりません。また、 自分達が承認したそのプロジェクトの次ステージの活動(ゲートミーティング後も)においては、責任を持って積極的な支援を行わなければなりません。

 これら評価者をステージゲート法では、ゲートキーパーと呼んでいます。日本語では門番という意味ですが、門番というと厳しい語感がありますが、文字通りゲートキーパーは評価において厳しくプロジェクトを評価します。つまり、ゲートキーパーは、筋の良くないプロジェクトは、中止するという厳しい姿勢を持たなければなりません。この部分はステージゲート法の運用全体において極めて重要な部分ですので、別途詳しく議論をしたいと思います。

 但し、ゲートキーパーは支援の役割も持っていることも理解しなければなりません。厳しい評価と支援はバランスをしていなければなりません。(繰り返しになりますが、支援に偏りすぎないよう注意が必要です。)

 ゲートキーパーは、プロジェクトの性格(プロジェクト規模、革新性、戦略的な位置づけ等)またどのゲートかによって、メンバーは変わります(但し全員ではありません)。大きなプロジェクトにおいては、開発開始直前のゲートでは、CEOを含め上級の役員クラスが参加します。ゲートキーパーは管理職・役員が担当します。

●プロジェクトリーダーとメンバー
 当然、評価の対象となるプロジェクト推進を当事者として担当しているプロジェクトリーダーとメンバーもゲートの重要な関与者です。プロジェクトリーダー及びメンバーは、前ステージのプロジェクトメンバーの活動を基に、ゲートミーティングでプロジェクトについてのプレゼンテーションを行い、その後もプロジェクト評価の場に同席し逐一ゲートキーパーの議論を見守り、最後にゲートキーパー(の長)からプロジェクトの最終決定を聞きます。そして、プロジェクトが「ゴー」の場合には、次ステージ実行のための経営資源の確約を受け取ります。

●プロセスマネジャー
 その他に、ゲートを含めステージゲート全体の運営を担当するプロセスマネジャーと呼ばれる担当者がいます。プロセスマネジャーは、ゲートの運営に関しては、事前にプロジェクトリーダーからゲートへの提出書類である「成果物」を受け取り、ゲートキーパーが事前に内容を読み込むことができるように配布します。また、ゲートミーティングにおいては、司会者の役割を担います。

 プロセスマネジャーは単に事務局ではなく、ゲートのみならずステージゲート全般にわたり(その中でゲートに関わる活動は中核を占めますが)推進主体としての重責を担うもので、相当の力量が求められます。

●ゲートの進め方の概要
 ゲートの活動は、ゲートミーティング(ゲートで行われる会議をこのように呼びます)で行われます。時間は1.5~3時間で、半日や丸一日も続けるということはありません。逆に言うと時間がこのぐらいに収まるように、ゲート(およびステージゲート全体を)をデザインするようにします。

 ゲートミーティングは、プロジェクトリーダーによる、前のステージで行った活動の内容、そこに基づく当該プロジェクトの事業の視点からの魅力度、次ステージの詳細な活動・スケジュールを含めた今後の活動等のエッセンスをゲートキーパーにプレゼンテーションします。

 プレゼンテーションを受けるゲートキーパーは、事前に配布された資料を十分に読み込んできているという前提ですので、内容を詳細にプレゼンテーションする必要はありません。むしろ、その中での重要事項に絞り説明することが求められます。逆に重要事項がこのプレゼンテーションでとりあげられていないと、プロジェクトリーダー・メンバーはその重要度を理解していなかったということになり、難しいことになります。

 その後ゲートキーパーとプロジェクトメンバー間の質疑応答の後、ゲートキーパーはプロジェクトの評価に入ります。事前に決められた評価項目・評価基準に則り、ゲートキーパーが評価を行います。プロジェクトメンバー側が予め評価し、その内容をプレゼンテーションする企業もありますが、基本形はゲートキーパーがその場で評価をします。ゲートミーティングは評価(結果)を出す場だけでなく、その前提となる評価のための議論をする場です。言い換えるとゲートは、効率的・効果的に「議論をする」ための仕組みです。したがって、ゲートはその前提でデザインする必要があります。

 具体的には、各ゲートキーパーが各自評価をし、その全員の評価結果をプロジェクターに写し、ゲートキーパー間で大きな乖離のある項目を中心に議論をし、乖離を解消させます。

 評価結果は事前に決められたゴー/キルの基準に則り行われます。ゴーとなったプロジェクトについては、次ステージで必要な経営資源を承認します。

 

次回から、ゲートの運営に関して、個別の掘り下げた議論をしていきます。