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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第175回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋(22): イノベーションに必要な5つの要素

(2018年2月13日)

 

セミナー情報

 

前回は形式知の問題点の議論をしましたが、今回はイノベーションを起こす上で必要となる5つの要素について議論をしたいと思います。

●形式知はその創出者のアタマという細いストローを通して創出されたものに過ぎない

前回は、形式知の問題点として、形式知はその創出者自身のアタマという細いストローを通して創出されたものに過ぎません。そのため、そもそもその形式知が正しい保証はないし、またその創出者が経験したことから得られる知識の極一部である点を指摘しました。

加えて、形式知だけでは、イノベーションを起こすには限定的です。なぜなら形式知は既に言葉や文章に表現されたものであり、広く流布していて他の人たちも同様の知識(形式知)を持っている可能性は高く、その結果創出されたアイデアはもはや新しくない可能性は高いからです。

それでは、イノベーションを起こすには、どのような要素が求められるのでしょうか?

●イノベーションに必要な5つの要素:知識、経験、思考、好奇心、意思

イノベーションを起こすには、以下の5つの要素が必要ではないかと思います。

○知識

前回も議論したように、一方で先人の創出した形式知は、極めて重要です。なにしろ、過去に存在した人間も含め、先人の創出した形式知は膨大であり、それらを学ぶことは多いに価値があるからです。

それから暗黙知もあります。暗黙知は、形式知のように言葉や文章には転化されてはいませんが、人間のアタマの中の知識として存在する知です。まだ明示はされていませんが、既に『知識』としては、存在しています。

これら形式知や暗黙知の様に既に形成されている知識は、極めて重要であることには、論を待ちません。

○経験

2つ目の要素が、イノベーションを起こそうとしている人が、独自の経験を数多くすることです。ここで言っている経験とは、暗黙知とは違います。暗黙知は明示はされていないけれども既に知識として人間のアタマの中に形成されている知識です。一方で、ここで言う経験とは、知識(形式知や暗黙知)に転化される前の、人間が五感で獲得するそのままの経験です。

この経験の一部が暗黙知として知識に転化されていくわけですが、個人のアタマの中には、転化されていな経験が多数蓄積されています。「あの時はあんな状態だったな」といったレベルです。

○思考

3つ目の要素が思考です。思考の役割は、知識(形式知や暗黙知)の間でのスパーク(化学変化)を起こして新たな知識を創出することや、経験を知識に変換(暗黙知に、更には形式知に)する活動です。

○好奇心

4つの目が好奇心です。人間が持つ、知らないことに対する欲求です。強い好奇心がなければ、新たな知識を吸収し、新しい経験を求め、なぜかを考えるということをしません。

○意思

最後の意思は、イノベーションを起こそうとする強い意思のことを言います。好奇心だけで、新しい知識や経験を求めるだけで、スパークは起きません。イノベーションに至らしめるには、知識や経験を広く求め、深い思考を継続して行う強い意思が必要です。

(浪江一公)