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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第165回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋(12):イノベーションへの抵抗とイノベーションの関係

(2017年9月19日)

 

セミナー情報

 

組織の中に見られるイノベーションの抵抗は、単にイノベーションを阻害するものだけではありません。今回は、広く存在する組織の中のイノベーションへの抵抗とイノベーションの関係について考えて見たいと思います。

●社員は放っておけばイノベーションを起こそうとするもの

身の回りにある製品、サービス、制度、決まり事、それぞれには多くのイノベーションが組み込まれています。それこそ市井の人間を含め沢山の人間が、人類の歴史の中で大小様々なイノベーションを起こし、このように細部にわたり日々の生活を快適・安全・便利なもとのするための文明を発展させてきました。企業に目を転じると、私は一人の人間である社員というものは、同様にその多くが同じようにイノベーションを起こす内在的な欲求を持っていると思います。

その理由として、私は企業におけるイノベーションの目的は「これまで存在しなかった大きな価値を実現すること」であると考えていますが、まずは根本に自らの頭脳や手により、世の中にとって価値のあるものを生み出すことにより、自己を重要なものと認識したいという心理があると思います。そしてその上で、世の中から注目を浴び賞賛されたり、また金銭や地位で報いられるということも追加的な部分としてあると思います。これらは、人間としての強い欲求であるだけでなく、現代人にとっては最も強い欲求ではないかと思います。

●希少性があるからこそのイノベーション

しかし、そのイノベーションの頻度は、期待されるレベルには達していません。それはなぜか?それは、そもそもイノベーションは希少であるからこそ価値がある、すなわち「イノベーション」であるからです。簡単にイノベーションが起こるのであれば、それはイノベーションとは定義されません。

●希少性は世の全体の組織のイノベーション抵抗の存在が生み出す

幸いなことに、イノベーションを希少なものとしている普遍的な理由があります。それは組織構成員である一人一人の社員を含む世の中の組織に広くそして強固に存在するイノベーションへの抵抗の存在です。組織は、イノベーションを実現するためだけに存在している訳ではありません。そのため、イノベーションを阻害する抵抗が生み出され、組織の中に根深く沈着しているのが通常の組織です。

つまり、世の中の組織に広く強く存在するこのようなイノベーションへの抵抗があるからこそ、一企業や一個人が、その抵抗を払拭してイノベーションを起こすことで初めてイノベーションが起こり、それがイノベーションと言えるわけです。

●他社には厳然と存在する抵抗を自社では払拭することでイノベーションを起こせる

企業の関心事は、「自社」でイノベーションを起こすことです。そのためには、広く世界中の企業に存在するイノベーションへの抵抗を、他社は差し置いて、自社においては払拭し、自社の多くの社員がそもそも自然に持つイノベーションへの内在的な欲求を解き放つことが必要となってきます。

それでは、それら抵抗とはどのようなものなのでしょうか?この点については、次回からその抵抗一つ一つについて議論をし、その上でその抵抗の払拭の方法について考えていきたいと思います。

(浪江一公)