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『価値づくり』の研究開発マネジメント

第154回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋(1): イノベーティブな組織とは

(2017年4月10日)

 

セミナー情報

 

今回から本メルマガでは、「普通の組織をイノベーティブにする処方箋」というテーマで、議論をしていきたいと思います。

●曖昧なイノベーションの定義

近年において、イノベーションという言葉ほど頻繁に利用される言葉はないように思えます。しかし、この言葉は曖昧で、例えば、日本経済新聞の記事の中では、イノベーションという言葉が使われると必ずカッコつきで「技術革新」という注釈が付け加えられています。既にイノベーションは技術の革新だけではないということが広く理解されるようになっている現在も、この注釈が付け加え続けられているということは、まさに未だイノベーションの定義があいまいである証拠のように思えます。

●民間企業における「イノベーション」の定義:2つの要素

私は少なくとも収益の創出を主要な目的としている民間企業においては、イノベーションは、「従来の製品やサービスでは実現できていない大きな顧客価値を実現すること」と定義するのが良いと思っています。この定義は、大きくは2つのキーワードから構成されています。

○「大きな顧客価値」の実現

上でも議論しましたように、民間企業は収益を挙げることを主要な目的としています。大きな収益を挙げるにはどうしたらよいのか?その答えは、大きな顧客価値を実現する製品やサービスを顧客に継続的に提供することです。顧客は自分達が享受する価値に見合った対価を払う用意があります。したがって、企業が大きな価値を提供すれば、大きな対価を払ってくれるのです。

○「従来の製品やサービスでは実現できていない(大きな顧客価値)」

もう一つの要素が、「従来の製品やサービスでは実現できていない」です。同じようなレベルの(大きな)価値が既に既存製品で実現されているのでは、自社がそれと同じような二番煎じの製品を出しても、大きな収益を獲得することはできません。なぜなら、価格というものは、競争があると必ず下がるからです。既に同じレベルの価値を実現する製品が市場に出ていて、それが10万円で売られているとします。二番煎じの自社の製品は、残念ながら10万円では売れません。そこで9万円という値段を付けます。そうすると、先行企業は自社製品を売るために8万円という値段をつけ。。。というように価格競争が起き、値段はどんどん下るというのが、経済原理です。

したがって、「大きな顧客価値」を実現するだけでは不十分で、従来の製品やサービスで実現できないような「大きな顧客価値」実現できなければなりません。

●イノベーティブな組織とは

以上のイノベーションの定義に基づくと、イノベーティブな組織とは、「従来の製品やサービスは実現できない、大きな顧客価値を継続的に創出できる組織」と定義することができます。

次回からはこの「イノベーティブな組織」の定義に基づき、普通の組織をイノベーティブにする方法について議論をしていきたいと思います。

(浪江一公)