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日本の製造業復活の処方箋「ステージゲート法」

第33回:ゲートの運営(その26):事業評価(21)
「非革新的テーマの評価項目」

(2013年3月18日)

 

セミナー情報

 

 先日弊社のステージゲート法のセミナーの受講者の方から、非革新的なテーマの評価項目はどのようなものがあるのが教えて欲しいという要望を受けました。これまで、このメルマガで紹介した評価項目は、革新的なテーマ、すなわち、世の中でも始めて、もしくは、自社にとって初めての製品のテーマを意識して議論してきましたので、今回はこの点について議論したいと思います。

■「エキスプレス」バージョンと「ライト」バージョン

昨年私の翻訳で出版をした「ステージゲート法 製造業のためのイノベーション・マネジメント」」の中では、革新的なテーマを対象としたステージゲートプロセスの「本格バージョン」以外に、「エキスプレス」(既存の製品ラインの拡張・追加)と「ライト」(製品の修正等)が紹介されています。実際には後者2つのテーマが全体のテーマ数の大半を占めるのが普通で、これらテーマをステージゲートプロセスの対象外とすると、ステージゲート導入の効果(第一の効果である革新的な製品を創出することに加え、第2の効果としての自社の経営資源を効率的に利用し、最大のリターンを得る)は限定されてしまいます。

■「エキスプレス」バージョンの評価項目

基本的に「エキスプレス」も「ライト」も、評価項目は本格バージョンのものより、簡単になります。なぜなら、既に当該事業を実際に推進し市場を含めた周辺の多くの情報は既にわかっており、従ってゲートキーパーとプロジェクトチーム側で、それら情報を既に共有しているからです。

本格バージョンとエキスプレスとの大きな相違点は、本格バージョンは自社にとって新しい分野に出て行くわけで、その評価の対象は「事業全体」になりますが、エキスプレスでの評価の対象は、その「製品」になります。それにより以下のような評価項目における相異が出てきます。

1.自社戦略との適合性・自社戦略へのインパクト
エキスプレスでは、既にこの製品ラインの展開をしているわけですので、この点は評価しなくても良いかもしれません。

2.提供価値・競争優位性
提供価値については、本格バージョン、エキスプレス両者とも極めて重要ですが、前者は自社の製品・サービス群全体で提供する価値に焦点を当てますが、後者では「その製品」が提供する価値に焦点を当てて評価します。また競争優位性については、前者は競合製品以外にも競合企業の強みや弱みも重視しますが、後者においては、主に競合製品に焦点を当て、製品における差別化の点を重視します。

3.市場魅力度
市場規模や成長性も、前者では事業全体の視点で算定しますが、後者では、その製品の市場規模と成長性を評価します。従って、前者より市場規模は小さく、また成長が継続する期間も短くなります。

4.コアコンピタンス活用度・技術実現性
前者では、その事業を展開する上で、自社の能力、資産、技術がどのように活用できるかという視点での評価ですが、後者では、従来の製品との「差分」を実現する上で、自社の能力、資産や技術がどの程度活用できるかという限定された評価で良いと思います。

5.リスク
リスクも上の4と同様に、エキスプレスでは、従来の製品展開の加えて追加的にどのようなリスクが想定されるか、そしてその対処法はどのようなものかを考えることで良いです。

6.財務分析
すでに、市場規模、販売価格、コスト等についての相当の情報が蓄積されているはずですので、最初からかなりな精緻が財務分析ができますので、この点は本格バージョンより精緻な分析を行います。

■エキスプレスのステージとゲートの数
エキスプレスでは既に市場や財務分析の前提となるデータは既に整っていますので、本格バージョンで行なう初期の予備的な調査ステージとその評価のゲートは不要です。最初から本格的なビジネスプランを策定し、その評価(ゲート)に基づき、開発に進むことになります。

次回も引き続きこの議論をしたいと思います。