Top
> メルマガ:日本の製造業復活の処方箋『ステージゲート法』

 

日本の製造業復活の処方箋「ステージゲート法」

第11回:ゲートの運営(その4):準備評価(2)

「プロジェクトチームの成果物サインの前提の活動ポイント評価」

(2012年10月9日)

 

セミナー情報

 

前回からゲートでの評価項目の一つ目の準備評価についての説明をしています。今回も引き続き本テーマの議論を続けます。

前回、準備評価では、

1. プロジェクトチームによるデータの信頼性についての自己評価(成果物へのサイン)
2. その自己評価の前提となる活動のポイントの評価

の2つの評価があることを説明し、その上の1.の議論を行いました。

今回は2.の議論をしたいと思います。

■2. その自己評価の前提となる活動のポイントの評価

上の1.だけでは不十分と考える場合、データの信頼性の前提となる活動をさらに掘り下げて評価するものです。

○1.のみでは不十分な理由

データの信頼性について、総合的な判断を1でプロジェクトチームに宣誓してもらって行っても(成果物へのサインにより)、現実には前のゲートの重要な活動が行われていないことも当然想定されます。理由は2つあります。

1つ目は、プロジェクトチームには通常、当該ゲートを通過させたいという強い意図があり、実際にやるべき活動を行っていなくても、もしくはやるべきレベルでやっていなくても、高い(自己)評価をしてしまう強いモチベーションが働く。

2つ目に、仮に自分達は重要活動において十分な活動を行ったと考えていても、経験不足ゆえに、客観的に見るとそうでない場合が起こる。

上の2つは、現実には相当の確率で起こりそうです。したがって、「2. その自己評価の前提となる活動のポイントの評価」の評価も行うべきでしょう。

○「2. その自己評価の前提となる活動のポイントの評価」で行うべき評価項目

それでは、どのような評価項目のチェックを行うべきでしょうか?

私は、以下2点で評価を行うのが良いと思います。

視点1:マーケティングの3C
視点2:技術

■視点1:マーケティングの3C
技術開発や製品開発で最も弱い点が、マーケティングの視点です。したがって、この点についての確認を行う必要があります。具体的には、きちんと市場の調査を行ったか? 実際に顧客の声を聞いたか?の2点の評価を行うべきです。

マーケティングを少しでも勉強した方は、マーケティングの3Cを知っていると思います。3Cとは、マーケティングの分析の対象として、「市場」(Customers)、「競合」(Competition)そして「自社」(Company)を意味します。ステージゲート法においても、この3Cは分析調査の対象としてきちんとカバーしなければなりません。

但し、この準備評価で全ての面を評価する必要はありません。この後に事業評価があり、そこでは内容に踏み込んで評価を行いますので、効率的に評価を行うためにも、そこで評価が十分できない項目そして重要な項目に絞って評価すれば良いと思います。

○「市場」について
市場における重要な項目は、どれだけ市場を俯瞰的に見ているか?そして重要な顧客のなまの声を集めたかという視点です。したがって、準備評価においては以下の質問をすることが良いでしょう。

ア)市場の全体像を捉えるための活動をきちんと行ったか?その為の活動を簡潔に記述せよ。

イ)以前のゲートで定めた重要顧客を含めて十分な数の顧客のなまの声を収集したか?訪問対象の顧客名を記述せよ。

○「競合」について
ウ)重要な全ての競合企業についてのプロフィール、企業としての強み・弱み、製品の強み・弱みを調査・分析したか?調査対象の競合企業名を記述せよ。

○「自社」について
エ)本テーマに知見を持つ、また今後関係を持つ社内の関連部門からの知見を本プロジェクトに反映させる活動を十分に行ったか?

最後の「自社」については、往々にして(特に初期段階では)、社内の組織の壁の存在ゆえ、本来社内に関連する知見を持つ部署があるのに、その知見を活用していない例が多いのです。その点からもこの点についての質問が必要でしょう。また、早い段階から関連する部門を巻き込むと言う意味からもこの質問は重要になります。

■評価項目の意義:プロジェクトメンバーにすべきことを知らしめる

評価項目はそもそもプロジェクト評価するものですが、それに加えもう一つの重要な意義が、プロジェクトチームに各ステージでの活動の意味、重要なポイントを指し示すものであるということです。これは準備評価だけでなく、評価項目全体にいえることです。

従って、評価項目やその記述内容も、このの視点を考慮して決める必要があります。

 

次回も引き続き準備評価の話をしたいと思います。