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成長・拡大

事業は放っておけば、いつかは必ず成長は鈍化します。

成長の鈍化

 

成長の鈍化には、大きくは以下のような3つの要因があると考えられます。事業の成長の鈍化は、市場の成熟化という外的要因が主要な理由ではありますが、市場の成熟化は知らず知らずの内に社内のものの考え方を固定的にし、それが事業の成長の鈍化をより促進するという関係にあります。
それぞれの要因についての対処法を、議論したいと思います。

成長の鈍化の

■ 「市場の成熟化」への対処法
 
① 顧客一社当りの売上高を拡大する
  これまで提供してきた製品・サービスのみならず、その周辺にまで対象領域を広げ、顧客一社当りの売上高を拡大する戦略が有効です。ソリューション戦略はこの戦略の典型です。この戦略を展開するには、従来の自社製品提供という自社起点の発想から、真に顧客の課題を解決するという顧客起点の発想に転換する必要となります。多くの企業がこの発想の転換ができず、ソリューション戦略は必ずしも巧く行っていないのが、現状です。
   
② 市場セグメントを見直す
  市場セグメントを見直すには、2つの重要な方向があります。
一つは、従来対象としていなかった市場セグメントまで、自社の対象を広げること。
二つ目は、市場のセグメンテーションの視点を変え、従来とは異なった切り口で市場をセグメンテーションをするということです。
例えば、下の図は最適セグメンテーションのポイントをコストの面から、説明したものですが、時代の変化によりマーケティングコストや機会損失は変化するもので(特にITはこの構造を大きく変えた)、最適セグメンテーションの単位も変化します。

 

最適セグメンテーションのポイント

最適セグメンテーションのポイント

③ 利益を重視する
  成長期でももちろん利益を重視するのは当然ですが、成長期ではむしろ売上高拡大をより重視する、もしくは、売上高拡大を通じ利益を確保するという戦略が一般的です。
一方、成長期においては、明確に利益率を重視した展開が必要となります。ここで重要なのが、単なるコスト低減だけでなく、戦略的に利益率を向上させる策を打つということです。(もちろんトヨタのような組織的・体系的コスト削減は、それが徹底的であり、戦略的であるという理由で、後者に属する。)
どう利益を重視し、策を打つかは、拙著「プロフィット・ピラミッド 高収益を実現する14のシンプルな原則」を参考にしていただければと思います。
   
④ 競合他社を買収する
  成長期においても、当然競合企業との熾烈な競争を行ってきていますが、成熟期においては、全体のパイの成長が鈍化した中での競争であり、更に熾烈になる傾向にあります。このような中においては、M&A戦略は競争を緩和し、かつ自社の事業規模を拡大し、より大きな規模の経済性を手に入れることができるという面で、有効となります。

 

■ 「技術の成熟化」への対処法
 
① 自社の技術ドメインを、要素技術ベースから機能ベースに転換する。
  クレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」の主張は、その機能を実現する現行の技術は時によりレベルの低いと思われていた技術に代替されてしまい、先行する技術を開発したイノベーターは先行する技術に固執する結果、没落するというものです。アナログ・レコード→CD→音楽のダウンロードの技術の変遷における機器、部品メーカーはそのような技術の変化に翻弄された典型です。
そこで重要になるのが、個別の要素技術ではなく、その技術が生み出す機能(上の例では音楽の蓄積、再生)をベースに、その実現に必要な最適技術は何かという視点で、対象の技術を選択していくこと、すなわち要素技術ベースから機能(その技術が最終的に実現する価値)ベースに発想を変えることです。
   
② 技術ロードマップを作成する。
  そこで、最適な技術とは何かを考えるツールが技術ロードマップです。技術ロードマップは、向こう10年程度の長期において、どのような技術が市場において利用されるのかを想定するツールです。技術ロードマップ自体には何の特別な工夫があるわけではありません。どのような技術がどのようなタイムフレームで実用化されるかの予測を、表に表したものに過ぎません。実は、技術ロードマップのポイントは、その作成のプロセスにあります。技術ロードマップ作成には、社内(及び社外)の、その技術に関わる人材を集め、喧々諤々の議論を行い、その結果を技術ロードマップにまとめるものです。その議論の結果が正しいという保証はどこにもありませんが、少なくとも現状での社内(と社外)の最高の英知をそこに結集し、その結果、予測確率は高まります。またこの過程で技術の将来についてのコンセンサスが得られ、技術開発の方向性が決まるというメリットは大きいと言えます。

 

■ 「組織の成熟化」への対処法
  組織の成熟化への対処法として、網羅的ではありませんが、ここでは我々が重要と考える2つの視点を提示したいと思います。
 
① バックキャスティングする。
  組織が成熟化するとは、それまでに試行錯誤で得られた自社特有の勝ちパターンが、組織の共有価値の形で、組織内に定着している状態と定義できます。言い換えれば、自社の勝ちパターンにはずれた活動を敬遠する風土・文化とも言えます。
ゲイリー・ハメル(ロンドン・ビジネススクール教授)とC・Kプラハラード(ミシガン大学教授)は、 1994年に「コアコンピタンス経営」の中で、自社固有の強みである「コアコンピタンス」の重要性を訴えました。勝ちパターンとは、この「コアコンピタンス」と類似したものと見ることができます。この著書の存在もあり、多くの企業において自社の強みをベースに経営を行うことが重要であるという、神話が広まりました。
ここで「神話」と書いたのは、私たちはこれまでのコンサルティング経験から、多くの企業において、余りに自社の強みにこだわる強い傾向が見られ、この「コアコンピタンス」の薬が効きすぎたと感じているからです。しかし、実は、仮に現状自社が販売している製品の市場が成熟化しても、市場の見方を変えることで、新たな事業機会を発見することができるのです。自社のコアコンピタンスにあまりに拘泥しすぎると、このイノベーションの可能性を低めてしまいます。
バックキャスティングとはフォーカスティング(forecasting:予測)の、反意語で、フォーキャスティングが今あるところ、つまり自社の強みから将来の到達可能な姿を予測するのに対し、バックキャスティングでは、将来のあるべき、ありたい姿を描き、その後にそこに行き着く方法を、自社の強みは横に置いて「ゼロベース」で考えるというものです。
このような発想ができる組織への転換が、一つの象徴的な変化という意味で、成熟化というトラップにはまった組織に求められます。
   
② 組織変革が自律的に進む臨界点まで粘り強く、しかも迅速に変革を推し進める。
  上の①は実は組織変革した後の姿の一つを言っているだけであり、本当に組織の成熟化から解放された組織は、このような活動を複数そして継続的にできる組織のことと言えますが、現実にはそのような組織変革を実行することは簡単ではありません。
人間には変化に抵抗するホメオスタシスという機能が備わっています。その点、組織も人間と同様です。しかし、ホメオスタシスの強さのレベルは組織を構成する人により通常異なり、健全な組織であれば、必ず変革の必要性を強く認識している人たちが、少数ではありましょうが存在するものです。まずはそのような人たちを集め、変革の核として活動を開始し、少しづつその活動を組織の他の部分に伝播していくという、粘り強い組織変革の為の活動が必要となります。
そして同じような認識を持つ社員の割合がある閾値を超えると、組織変革は自律的に進むようになります。
このような閾値にいかに早く到達するかが、勝負になります。